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限られた時間

大切にしたいことを伝える

山口 牧子

2025年12月5日

看護師の山口です。

伏見の街も、木々の葉が色づき朝晩の冷たい空気が清々しい季節になりました。短い秋が終わり冬の始まりを感じるこの頃です。

 もし、自分が不治の病で、来年の冬を迎えられないと知ったとしたら、どうしたらよいのか。残された時間が限られ、いつどんな風にその時がくるのかもわからない時、最後の時をどう過ごしたいのか。一人では立ち向かえないことも、周囲に自分の望みを伝える事で支える人が何をすべきか明確になり、共に大切な時間を過ごせることを学んだ事例を紹介します。

Aさんは50代の女性で事業をしながら、女手一つで息子さんを育てて来ました。

 がんがわかってから抗がん剤治療をしていましたが、副作用が強く治療の継続は困難となりました。体重が減り、せん妄が出現し、とても辛く苦しかったため、体調が戻っても治療はしない選択をしました。在宅での生活を始めるにあたり、訪問看護を希望されました。初めてお会いした時は、とてもお元気で病気があるようには見えませんでした。ただ、治療をしていない以上病気は確実に進行するため、どんなことが気がかりなのか、最後はどこでどのように迎えたいか、それまでをどんな風に過ごしたいのかをお聞きしました。Aさんは、病気が進んで行くことは理解していても、自分の死と向気合うことは恐怖だとおっしゃいました。でも、最後までできるだけ稼業の役割を果たしながら、楽しくやりたいこともしたい。そのため、体力もつけてもっと歩けるようになりたいと思っていることを教えてくださいました。そして、入院は絶対にしたくないと言われました。

 そこで、歩ける体力回復のためのリハビリテーションを取り入れたり、症状緩和のための薬剤調整をかかりつけ医、薬剤師、看護師で連携して行いました。

 Aさんは、不安な気持ちを私たちと共有しながらも、自宅で来客の対応をしたり、家の中の要らないものを処分したり、まだ20代の若さで事業を継ぐ息子さんのために業務整理をされていました。他にも、体力が少し回復するとデパートに買い物に行ったり、ランチを食べたり、動けなくなるまでにやりたいことをひとつずつ叶えていき、実現するたびに私たちに報告してくださいました。Aさんのやりたいことはささやかですが、とても大切な当たり前の毎日でした。

 しかし、徐々に足がむくみ、腹水でお腹がどんどん膨らんで、動くのが辛くなってきました。でも、やはり入院はせず、近日に控えている事業の大切なイベントをなんとかやりとげたいと考えておられました。歩くのもやっとでしたが、妹さんに協力をお願いし、イベント当日はみなさんの前でご挨拶もされ、しっかり役割を果たされました。

 翌日、とうとうベッドから起き上がれなくなり、私たちが呼ばれました。

 私は、やりたいことをやり遂げられたのだなと感じました。息子さんや家族に今の状況を伝えて、残された時間が少ないこと、これから眠る時間が増えたり、せん妄になったりと、死を迎えるまでに起こりうる症状を説明しました。ご家族である息子さんは仕事が多忙で、本人の妹さんもいましたが体調を崩すことが多く、他に看れる家族がいないため、当初は自宅で看るのは難しいとおしゃっていました。しかし、Aさんの、入院は絶対にしたくない思いを伝え、家族の気がかりを確認し、息子さんや妹さんと何度も話し合いをしました。その結果、在宅で最後まで看ることになりました。

 その日から少量の麻薬を使って苦痛を緩和しながら、家族の気がかりだった負担を軽減するため、ケアマネージャーと連携し、サービスの調整を行いました。リクライニングベッドを導入し、看護師は毎日午前、午後に訪問し、麻薬や薬剤管理、体調管理を行い、ヘルパーさんは1日4回訪問し、ケアできるようにしました。医師も頻回に往診をされ、本人、家族が安心して過ごせるサポート体制を整えました。

 そして数日後にAさんは、本人が望んだとおりに自宅で家族に見守られて穏やかに最後を迎えられました。家族は本人の思いをかなえてあげられて本当に良かったとおっしゃっていました。

 人生に突然終わりが来ることを告げられ、仕事も家族も生活も全てが数ヶ月で終わってしまう未来を事実として認め、向き合うことは容易ではありません。その数か月の間に、いつ、どんな苦しみが来るのか、医療者にも正確にはわかりません。

 でも、その日が来るまで怯えて生活するのではなく、限られた時間の中でなにを大切にしたいのか、Aさんは明確に周りに伝えていました。それを実現するためには何が障害となっているのか、在宅にかかわる家族や医療者、ケアマネージャー、薬剤師、ヘルパー、理学療法士などの多職種が共有し、その人にとっての大切を、関わる全ての人も共に大切にすることでかなえられたAさんの在宅での看取りでした。

 できることが一つずつ失われていく喪失体験の中で、不安や怖さと向き合いながらも自分の役割を立派に果たされたAさん。死を避けることはできないが、最後まで自分らしく生ききることの大切さをAさんから学びました、それを私たちは在宅の多職種が協力することで支えることができたことは、今後の在宅支援の自信につながりました。

 在宅で最後を迎えたいと思っている人は、日本人全体の70%を超えるのに、家族への負担や在宅で過ごすことへの不安から、いざとなると7割の人が病院で最後を迎えます。

 どちらが良いとは言えません。それは本人が望んでいるか、家族が家で看取りたいと思っているか、在宅の看取りの不安がないかで決まると言われています。少なくとも本人が望むなら、私たちが共に考え、思いがかなえられるようにこれからも支援していきたいと思います。

訪問看護リハビリステーションたもつでは、利用者さんの思いを尊重し、最期の過ごし方、場所を決定しています。
訪問看護リハビリステーションたもつでは、京都市伏見区、京都市南区、山科区を訪問しています。あらゆる疾患に対して、24時間365日体制で訪問させていただきます。訪問看護訪問看護リハビリステーションたもつ京田辺 は、京田辺市、城陽市、井手町、宇治田原町、精華町の訪問体制を更なる構築したいと考えています。スローガンではなく、実際に活動できる実績のあるステーションとなったと自負しています。

 2026年1月以降の看護師・言語聴覚士を募集しています。在宅看護に興味のある方は募集要項にありますメール・電話にて連絡お待ちしています。楽しく、明るく、質の高い看護を提供しましょう。業者を通さず、ホームページからの直接メールまたは電話での採用を優遇し、5万円の就職祝い金を支給します。また、6ヶ月後基本給をアップさせて頂きます。

                               統括所長 西谷 保

山口 牧子

  • 看護師

  • 緩和ケア認定看護師

利用者とその家族の思いを聴き、その思いをできるだけ叶えられるよう、共に考えること。

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